楽器について

コラの歴史と役割

コラ(KORA)は、西アフリカのセネガル、ガンビア、ギニア、ギニアビサウ、マリなどに広範囲において使われている弦楽器です。元来はジェリ(仏語でグリオ)という世襲制の伝承音楽家だけが触ることを許された楽器でした。

「触ることを許された」という意味は、かつては「音楽」は特別な力を秘めていた、と信じられていたからです。(このように特別の人々だけが演奏する楽器には他に、バラフォン、タマ、サバール、ンゴニなどが知られています。)

文字のない西アフリカの文化におけるジェリの役割は大変重要でした。
歴史を歌という形で伝え、儀式を司り、音楽で病気を直したり、時には魔法をかけたりすることもできる彼等は、尊敬され、また怖れられていました。

そして偉大な王は、楽器の力、精霊の力を借りることによっていくさに勝ったり、民を統治することができるのだ、と言い伝えられています。

王様は王子が生まれると、かならず1人の優秀なグリオを彼に付けます。
グリオは常に彼につきそい、あらゆる面で終生彼を助けることになるのです。
そしてコラは眠りにつくときの王様の心を癒した、とも言われています。

コラの起源については、ガンビアの海に浮かぶ小島で「ジン」と呼ばれる精霊が人間に与えたという伝説があります。文献では1799年のMongo Parkの「Travels in the interior districts of West Africa as korri」に記述が見られます。

他にもスンジャータ・ケイタという伝説の王がいた時代から数百年以上という説や、せいぜい300年以内、など諸説があっていまだに確定されていません。
個人的には、神話的時代から物語がコラによって歌い、語り継がれてきた、というイメージを大切にしたいと思っています。

コラの構造

西洋音楽的分類ではハープ・リュート型の楽器とされています。いわゆるハープ、竪琴の仲間です。西洋音楽から見た呼び方で「アフリカン・ハープ」と言う事もあります。20数本の弦が、ボディの上に立っている、切れ込みを入れた木製の駒に左右に分かれて張ってあります。弦の数は21本が基本ですが、23本を好むプレイヤーや、もっとたくさんの弦を張る人もいます。(ジェリ・ムサ・ジャワラというコラプレイヤーがハープのような弾き方で32弦のコラを弾いているのを見たことがあります。)

弦を増やす理由は、単純に高音を増やしたいこと以外に、右のルート音の手前に、エキストラの弦を張っておいて、チューニングを変える手間を省くことにも使われます。
また、その昔、23本が基本だった時代、コラの巨匠が死んだのを悲しんで、コラ奏者がこぞって弦を21本に減らした、という言い伝えもあります。

弦は主に「釣り糸」を使いますが、ハープ用の弦を張るプレイヤーもいます。
釣り糸がなかった時代は動物の皮、腱、腸、あるいは絹糸だったようです。絹糸が使われた理由は、昔アフリカの王国が栄えていた時代に中国との交易で手に入ったからだと想像できます。

木の板で出来た駒は、布で包んだ木の板(通称座布団)の上に立てて、ボディの上に直角に立てられます。ブリッジを座布団に固定しないのは、倒せばコラを持ち運ぶときにかさばらないし、楽器を痛めないという理由からでしょう。

ボディは大きなヒョウタンを2つに割ったものに、子牛またはヤギの皮を張ってあります。皮は鋲でボディに固定してあり、鋲の配列によって独特の模様がデザイン化して描かれています。

ヒョウタンの切り口の内側のふちに、ボディ補強のためと、音量アップの理由から鉄のリングを這わせることがあります。
ボディには横に心棒というべきものが横に一本渡してあり、その上に縦に2本、持ち手が通ります。心棒には弦のテンションがかなり強く加わるために、たわんだり、まれに折れたりするので、交換の必要が生じることもあります。

ボディには縦に太い木の棒(ネック)が貫通しており、最下部には鉄の輪が取り付けられていて、ここに弦を結ぶための紐が結ばれています。(紐の場合も、ナイロンの釣り糸の場合もある)紐から出た弦はブリッジを通ってネックに取り付けられます。ネック側は皮ひもを編んだリングに弦を結びつけます。

チューニングはこの皮のリングを上下させて行うわけですが、現代では、木製のペグで留めたり、ギター用、エレクトリックベース用などのペグを取り付けて調弦を容易にする工夫がなされているコラがあります。(調弦については「調弦と曲」ページ参照)

前述のジェリ・ムサ・ジャワラは、共鳴胴がないソリッドのボディを持ったエレクトリック・コラを開発しています。ギターに例えるとアコースティックギターに対するエレクトリック・ギターの関係に似ていますね。また、曲によって調弦を変更する手間を省くために、ダブルネック・コラも作られています。

さらに、金属のネックとU字型のホルダーのみで、ボディーさえ省略したエレクトリック楽器があり、もはやコラという名でなく「Gravichord」という名前の楽器として世に出ています。

しかしながら伝統的なコラは、「ネックは植物、ボディに張った皮は『動物』、ボディは『地球』を、弦を留める金属の輪は『マジック』を象徴している」そうです。そこに『人間』が加わったときに、はじめて、世にも美しいコラの音楽が生まれるのでしょう。